ケルバーダイン Nドール バトルストーリー第26話(AD2363年)『hungry?』
Nドール バトルストーリー(AD2363年 『hungry?』)
腹が減った
いい匂いが充満している
このケルバーダインと一体になっているときは、いつもその匂いを感じる
香ばしく、旨みと塩分を感じる、芳醇な香り
だが、それは香りだけだ
腹が減った
最後に食べたのはザンティスの串焼きを3本
筋張って、硬いが、食わないよりはマシだ。
腹が減った。
雪が舞っている。
目の前に立つ、建造物を見上げようとするが、このケルバーダイン、Nドールは構造上、上を見上げることができない。
腹が減った。
俺の仕事は、冬の間、絶え間なく降り注ぐ雪からこの建造物の開閉スイッチを守ること。
雪が積もったら右腕のPLAフォークで除雪する
PLAスプーンのほうが効率がいい、と何度も上に支給を願っているが、聞き入れられることはない
腹が減った。
この建造物はグロッフのPGの住居だ。
俺のような、スラム出身のジャンクパーツには縁遠い場所だ。
腹が減った。
PGたちは、旧人類の残したご馳走を毎日腹一杯食べているらしい
そう……NDLもだ
NドールはNDLが封入されている容器、NDLカップで再生構築されている
PGたちが中身を食べたあとの残りカスだけが、俺たちに回ってくる
腹が減った
一度でいい。
一回だけでいいんだ。
NDLを食べてみたい。
どんな味がするんだ。
俺はNDLの匂いしか知らない
腹が‥‥‥?
突然、轟音と共に、建造物の扉が内側から吹き飛ぶ。
中から見慣れないケルバーダインが続々と現れる
あれは…… ここ数年、箱庭都市を脅かしているエグゼクト革命軍のケルバーダインだ
そのうちの1機が、こちらに近づいてくる!
『ひっ‥‥‥!』
聞いたことがある
エグゼクト革命軍のケルバーダインは火を吹き、30cmもジャンプし、5メートル先の敵を破壊するらしい
信じられない性能だ
長時間活動しか取り柄の無いNドールが敵う相手ではない
『しまった‥‥!』
後退りすると、短い足がひっかかり、横倒しになって動けなくなる
エグゼクト革命軍は敵に一切の容赦をしないという
奴らはグロッフの支配者であるPGを狙ってる。
PG施設を護衛している、俺を奴らが味方と思うわけがない!
黒いケルバーダインが眼前に迫る
ここで終わりか
最後に、最後に、一口でいい
『NDLを、食べたい‥‥‥!』
最後の願いを叫び、俺の意識は暗転した‥‥‥
「うまい!」
うまい。
うまい、うまい、うまい!
「おい、急ぎ過ぎだ。喉につまるぞ」
「NDLは山ほどある。焦るな」
夢にみた、本物のNDLを口いっぱいに頬張る
この旨み、塩加減。
絶妙なコク、柔らかな食感!
本物だ!
俺は、今本物のNDLを食べているんだ!
エグゼクト革命軍のケルバーたちが、PGから奪い取ったNDLを主菜に勝利の宴を開いている
彼らはPGに酷使されている、俺を哀れに思ったらしい
「NDLは子供の頃にしこたま食わされたんでみるのも嫌なんだが」
「今は高級品なんだよ」
「時代は変わるねえ」
「たまに食べると、無性にうまいんだよな」
もう、腹はいっぱいだ
エグゼクト革命軍は、全てのケルバーの自由と平等‥‥「FREEDOM」「NO BORDER」を理想に戦っているらしい
俺は、彼らの仲間になることにした
このミキシングワールドには、まだ見つかっていない旧人類の遺跡が数多く存在し、大量のNDLが眠っているという。
俺は、戦う。
毎日、全てのケルバーが、NDLをたらふく食える世界を再生構築するために。
Nドール機体解説
Nドールは旧人類の遺跡から出土する食料品梱包材「NDLカップ」を利用して再生構築されたケルバーダインである。
NDLカップは軽量かつ強度があり、断熱性が高く、薬剤耐性も強い。
主に住居に使われることの多い素材だが、ケルバーダインにも使われている。
最大の特徴は、NDLカップの形状をそのまま利用しているということ。
人型に見えるギリギリのプロポーションはリザレクト圏でエグゼクスを経験していないケルバーも騎乗、運用可能な限界のラインとなっている。
その形状ゆえ、ミキシンクロレートが安定しており、長時間活動可能であるため、作業用や観測用ケルバーダインとして使われることが多い。
断熱性が高く、温度変化に強いため、寒冷地や砂漠地帯などの局地でも愛用されている。
反面、その形状ゆえ機動性は低く、動きも鈍いため、格闘戦にはまったく向いていない。
この個体はAD2360年代にグロッフでの施設点検作業に従事していたもの。
RICは簡易的な冬季迷彩がほどこされている。